みかぶし。

TW2『シルバーレイン』で活動中の南・成実(b80160)と同背後キャラ、及び背後の呟きや雑記。

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2011.09.05 Monday

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2011.03.09 Wednesday

折れない剣

「西・竜彦! あたしと勝負して貰おう!」
 ドアを壊しかねない勢いで登場した成実に向けて、二人分の視線が一斉に突き刺さった。
 ……のも束の間、竜彦の視線は再びPSPの画面に向いている。同席していた女もまた、成実の存在を無視するかのようにゲームを続けている。
「ねえ、聞いてんの?」
 聞いてはいる。だが勿論、二人からの返事はない。成実の眉間に皺が寄る。
「お前ら……ゲームやめてちょっとこっち見ろ!」
 その言葉を受けて、二人が視線を上げた時間は実に一秒にも満たない僅かな時間。ぎりりと成実の奥歯が鳴り、その手が懐に伸ばされる。
「あたしは、シカトすんなって云ってんだよッ!!」
 遂には彼女がイグニッションカードを取り出した所で、漸く竜彦の口から大きな嘆息が漏れた。


 それから時間にして約10分後。成実と竜彦は四方をコンクリートで固められた殺風景な部屋で対峙していた。
 いや、対峙すると云うには若干の語弊があるか。二刀を携え相手を睨んでいるのは成実だけで、一方の竜彦は構えどころか武器さえ持っていない。
「あんた、やる気あんの?」
「ある訳ないじゃない。折角燈蛹君とパーティープレイしてたのに――」
 竜彦の言葉は最後まで発せられない。業を煮やした成実が斬りかかったからだ。
「短気は損気だと思うんだけど、っとと!」
 初撃こそ避けられたが、返しの一閃が竜彦の髪を斬って散らす。手入れを欠かさない自慢の髪を斬られた事に、流石の彼も慨嘆を隠せない。
「ちょろちょろと……動くな!」
 銀誓館学園に編入した事により、成実の剣技は二週間前とは別人とも思える冴えを見せていた。
 戦闘技術そのものは、竜彦による訓練――成実は拷問だと思っているが。により確かに上達しているが、何よりもレベルそのものが急上昇した事が大きい。
 加えて、初仕事を無事に成功させたと云う事実が成実の背中を押していた。
(「あの時は全然だったけど、今はアイツの動きが見える……」)
 防戦一方の竜彦に休む暇を与えず仕掛け続ける彼女の胸の中で、未だ味わった事のない高揚感が湧いてくる。
 初めて出会った時から今まで、何度となく地べたに転がされたか。傷が治る度勝負を挑んでは、その度に返り討ちに遭い、這い蹲った。
 竜彦は成実に、寝込みを襲えやら不意打ちをしろだの教授したが、それは大して意味がない上に、何より彼女自身が許容できなかった。
 元々卑怯な事や曲がった事が赦せない性分だ。目的の為ならどんな外道な手段でも躊躇なく行う竜彦と同じにはなりたくない。
 弟の仇討ちはなんとしても成し遂げたいが、正面切って正々堂々と戦った上で打ち破らねば意味がないのだ。
 そして――

「……ありゃ?」
「やっと……追い詰めたぞ」
 どれほど成実の斬撃を避け続けたか。遂に、竜彦の背中がコンクリートの壁にぶつかった。最早逃げ場はない。
 バツが悪そうに頬を掻く竜彦。対する成実は息さえ上がっていたが、己の勝利を確信した。
 先手を取って受けに回らせ、反撃の暇や隙を与える事無く攻めに攻めて攻め続ける――その作戦が功を奏した。次の一手で竜彦が左右どちらに逃れようと、一刀の元に斬り伏せられる。
「何か云い残す事があれば、聞いてやる」
 呼吸を整え、間合いを計り、機を待つ。対する竜彦は、無言で肩を竦めただけ。成実が両手に力を篭める。
「なら――弟の、祐喜の仇! 今までの外道を悔いて、くたばれ竜彦!!」
 必殺の、黒影剣。少なくとも成実はそのつもりだった。
 だが飛ぶ筈の血飛沫は飛ばず、竜彦を斬り裂く筈の一撃は空しくコンクリートを穿っただけ。
 寸前まで捉えていた竜彦の姿は成実の眼前から消え、替わって顎に与えられた激痛と、口に広がる血の味に呆然とする。
「何度も云うけど、目上の相手に対する礼儀は弁えなさいよ」
 低い姿勢から掌で成実の顎を打ち抜いた竜彦が、静かにそう告げる。更に体を沈め、中段に叩き込まれた渾身の肘。成実の口から空気と血反吐が漏れる。
 猛虎硬爬山――相手の一撃を捌き、打つ。八極拳に於いて絶招と呼ばれる奥義の一つだ。実戦でそう簡単に決められるものではない。
「井蛙不可以語於海者、拘於虚也……本気で僕に勝てると思ってた?」
 成実の体が崩れ落ちる。意識はあるが、最早体を動かす事は叶わない。

 壁際で観戦していた黒髪の女が、一つ鼻で哂って出て行った。金髪の少女は当然の結果だとでも云うように頷いている。
 竜彦が防戦一方だった間も、追い詰められたように見えた時も、彼女らはまるで慌てていなかった。
 もう少し成実が周囲に気を配る事が出来れば、それを訝しむ事も出来たろうが、今それを云っても仕方がない。
「初仕事を成功させたから、ちょっと位階が上がったから、それで僕に届くとでも?」
 成実は何も云い返せない。
 確かに彼女は強くなった。それは間違いない。加えて、竜彦を相手取って当初一方的に攻める事が出来た事も、彼女の目を曇らせた。
 成実の体の下に竜彦の爪先が滑り込み、伏せっていた彼女を仰向けに転がす。莫迦な女だとせせら笑い乍ら。
「事を見誤る人間は嬲られて当然、笑いものにされて当然なんだよ。彼我の実力差もわからないとはねえ」
 己と相手の間に距離があるのは成実にもわかっていた。だがそれも、学園に編入し位階を上げた事で、届く所まで近付いたと思えたのに。
 竜彦の狡猾さよりも、己の迂闊さに遣る瀬無い怒りが込み上げて来て、視界がぼやける。
(「またか。また泣いてるのか、あたしは」)
 自分はこんなにも弱く、涙脆かったろうか? 答えの出ない疑問に唇を噛み締める。
「……僕がキミに何の感情も懐いてない理由を教えようか? 歯牙にもかけてないからだ」
 その言葉を最後に、やがて興味を無くしたかのように竜彦が踵を返した。
 追う事も出来ない背中が遠ざかっていく。残った少女の事務的な治療が、持つ者から持たざる者への施しに思えて(実際にそうなのだろうが)、更に成実の心を傷つけた。

「泣いてましたよ、あの子。あんなに苛めなくてもいいでしょうに」
 廊下で待っていた女が、揶揄するような調子で竜彦に語りかける。成実の事を心配しての言葉でないのは、口元に浮かぶ笑みで明らかだ。
「泣けるようならいいさ。憤り、悔しいから泣く。泣く事さえできなくなったら、それまでだ」
 相変わらず竜彦の言葉には情らしいものが感じられなかった。だが、その口調は誰かを嘲るものではない。
「あのタイプは追い詰めれば追い詰めるほど良い。激情は炎、逆境は鎚だ。熱いうちに叩かないと、刀は駄目になる」
「いい刀になって欲しいですねえ」
 何気ない女の相槌に、然し竜彦は暫しその場に立ち止まり、
「なって貰わないと、生かしておいた意味がない」
 矢張り情け容赦の感じられない調子で、そう云った。

2011.09.05 Monday

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